重さ「1kg」が「1kg」じゃなくなった!?【キログラム原器の話】

高校生/受験生

え? 体重変わったってこと?? 減った!?

いや、変わりません…。説明します。

世界共通の1kgの定義が変わった

2019年5月 世界共通で使われている「1kg」の定義が変わりました。

世界共通の重さって?

日常生活で当たり前のように使っている重さの単位ですが、国によって重さの基準が違っていては困ってしまいます。

そのため、重さの単位は世界共通のもので国際的に定められた基準があります。

ちなみに「質量」とはどこに行っても変わらない「物質の量」のこと。「重さ」とは「物質にはたらく万有引力の大きさ」のことなので、地球上と月面では異なります。

このページでは、どこに行っても(地球でも宇宙でも)変わらない「質量」という言葉を使っていきます。

昔の「1kg」の定義

歴史

始まりは18世紀。「水1リットルの質量」を1kgと決めましたが、これは体積の変動があり不安定でした。

それに代わって、1889年 「国際キログラム原器」という白金とイリジウムから成る1kgの分銅が作られました。同じものを世界中に配られ、この分銅が世界共通の基準となりました。

その後130年ものあいだ、この「国際キログラム原器」が1kgの定義として用いられてきました。

問題発生

この分銅は人工的に作られたものなので、空気や汚れなどが触れて劣化しては困る!ということで、厳重に厳重に、何重ものガラス容器や金庫に入れて保管されてきていました。

しかし年々、この「国際キログラム原器」の質量がわずかに変わってきてしまっていることがわかったのです。

世界の基準のもととなる分銅の質量が変わってしまっては、これは大変!ということで、世界中の研究者たちが新たな基準を考えることになりました。

新しい「1kg」の定義

あらゆる研究の結果、決まった新定義がこちら。

キログラムは、プランク定数 ℎ を 6.626 070 15 × 10⁻³⁴ Js と定める

プランク定数とは、量子力学における普遍定数。要は、分子とか原子という学問のなかで、物質によって変わることのないすべてに共通する定数のこと。

どういうこと?

プランク定数に至るまで

何年経っても劣化しない、どこに行っても質量が変わらない定義がないと困る…ということで物理学的に定まっている、変わることのない値を使おう!ということになりました。

そこでまだ値がわかっていなかったプランク定数を求めるために行ったのが、簡単に言うと「1kgは原子が何個分なのか数えよう!」という試み。

そしてこの試みに「ケイ素」(シリコンとも呼ぶ)という物質を使うことにしました。

あんまり聞き馴染みのない「ケイ素(Si)」は周期表で見るとココ↓。「すいへーりーべーぼくのふね…」で覚えたアレです。

このケイ素を用いて質量1kgの球体を作り、それを用いて原子の数を測りました。(体積を測りやすくするために球体にされました。)球体のなかにはだいたい20兆の1兆倍個の原子が含まれていました。そしてあらゆる技術を用いて原子の個数と質量を求め、プランク定数を導きだしました¹⁾。(だいぶ端折りました…)

なぜ「ケイ素」だったのかというと、あらゆる原子のなかでもいろいろな面で扱いやすかったためです。その扱いやすさ・加工しやすさから、パソコンや携帯に使われる半導体にもケイ素が用いられています。

日本人研究者の活躍があった!

難しくなってしまいましたが…

こうして、以前のような経年変化の影響を受けない「1kg」を定義するに至ったのです。ちなみに、この定義が変わるまでに日本人の研究成果がとっても貢献しています²⁾。

どれくらい変わったのか?

新しい定義に変わってどのくらい変わったかというと、

国際キログラム原器の質量(昔の 1kg )は、新しい定義では 0.999 999 998 kg (2021年時点)

新しい定義により、国際キログラム原器の質量のばらつき(標準不確かさ)は20μg となったそうです²⁾。

我々の生活への影響

では定義が変わって、我々の生活がどうなるかというと…まったく影響はありません。

1kgから20μgのばらつきがあった程度で、日常生活に支障が出ることはほぼありません。もちろん体重も変わりません。

世界中の人の日常生活に影響がないように定義の変更をしています。

しかしこのわずかな違いや、精度の高い測定技術が、今後あらゆる分野の研究において大きな違いとなり、我々の生活に関わってくるのです。

まとめ

とっても簡単にですが、2019年に1kgの定義が変わったこと、キログラム原器などについてお話しました。

たかが 1kg かもしれませんが、ここに至るまでにたくさんの時間と研究者たちの積みかさねがあり、さらなる研究へとつながっていくことを改めて感じます。

当たり前に使っている世界中のあらゆる単位は、こうして決まっていくんですね。

参考
  1. “さらばキログラム原器、プランク定数にもとづくキログラムの新しい定義”. 産総研 質量標準研究グループ. 更新日2019年9月24日.
  2. “質量の単位「キログラム」”. 産総研 質量標準研究グループ. 更新日2021年11月15日.

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