日本にやってくる台風の渦巻きの向きは全て反時計回りと決まっています!どうしてでしょうか??
今日は【コリオリの力】についてお話します。
実は、台風の渦巻きの向きと同じ理由で、お風呂の栓を抜いたときにできるお湯の渦の向きも、台風の渦巻きと同じ向きに回るのです!
面白いですね!!!
台風の渦巻き
通常、日本で見られる台風の渦巻きはこのようになります。
渦の中心に向かって反時計回りに風が流れています。
これは日本だけでなく、北半球で見られる台風は、いつでもどこでも反時計回りの渦になります。
逆に、南半球で出現する台風は時計回りの渦になります。
なぜでしょうか!??順番に説明していきます!
台風が発生するメカニズム
気圧と風の流れについて
まずは台風のメカニズムについて。
台風の中心は、あたためられた海水が蒸発した水蒸気からできた低気圧です。
空気は気圧の高いところ(高気圧)から低いところ(低気圧)に向かって流れ、
あたためられた水蒸気は下から上に向かって昇ります。
例えば、日本上空の低気圧に向かって四方から風が流れていくと…
こうなりますが、この風の流れでは台風のような渦巻きにはなりません。
ここにさらに「地球の自転」と「コリオリの力」がはたらくことで渦巻きが生まれ、台風が出来上がります。
コリオリの力とは?
それではコリオリの力とはなにか?
言葉で説明すると…
回転座標系上で移動した際に移動方向と垂直な方向に移動速度に比例した大きさで受ける慣性力(見かけ上の力)の一種
「コリオリの力」ウィキペディア(Wikipedia):フリー百科事典
となります。
これだけではちょっとわかりにくいので図で解説します。
図1のように4色に塗り分けられた円盤を用意しました。
この円盤が左回りに回転し、それを上から見ている A と、円盤上に立っている B がいるとします(図1)。
ここで、赤丸から矢印方向にボールを投げてみます(図2)。
上から見ている A から見ると、回転する円盤の上でボールがまっすぐに飛んでいくように見えます(図3)。
一方、 B は円盤上で一緒に回転しています(図4)。
そのため、B から見るとまっすぐ飛ぶはずのボールが右にズレていくように見えます(図5)。
このように左回転する円盤の上では、実際に進むべき方向に対して右向きの力がはたらくことで、右にズレていくように見えます。この右向きにはたらく見かけ上の力が「コリオリの力」です(図6)。
- 本来飛ぶはずの方向(ベクトル):青
- 実際に飛んだ方向(ベクトル):赤
- コリオリの力:緑
左回転の場合は右向きのコリオリの力がはたらく
右回転の場合は左向きのコリオリの力がはたらく
台風の渦が出来上がるまで
それでは、この現象を地球上で考えてみます。
今度は、円盤の中心が北極で北半球を上から眺めているとします(図7)。
地球は東向きに自転しているので、北極側から北半球を見ると左回りに回転しているのがわかります。
北半球では左回転していることを踏まえて、北半球にある日本を例に考えてみます。
まず日本の関東上空あたりに低気圧がある場合を想定します(図8)。
先に説明した通り、低気圧に向かって四方から風が流れ、さらに北半球は左回転しているのですべての風に「(それぞれの始点から)右向きのコリオリの力」がはたらきます(図9)。
- 本来風が流れるはずの方向:青
- 実際に風が流れる方向:赤
- コリオリの力:緑
このように、四方からやってくるすべての風に「右向きのコリオリの力」がはたらくため、低気圧の周りは図10の赤矢印ように風が流れていきます(図10)。
そして全体の風の流れを見ると、図11のように反時計回りの大きな渦を作ります。
こうして、地球の自転により北極を中心に左回転をしている北半球では台風の渦巻きは反時計回り。
逆に南半球では時計回りとなるわけです。
風呂のお湯がつくる渦
実は、お風呂の栓を抜いてお湯が流れていくときにできる渦も台風と同様、北半球では反時計回り、南半球では時計回りとなります。
お風呂の栓を抜いたら是非覗いてみてください!
ちょっとした与太話(よたばなし)
さいごにちょっとした笑い話です。
赤道直下のある国で、観光客向けに路上でパフォーマンスをするお兄さんがいました。
彼は言います。
「ここがちょうど赤道の境界です!」
そうして水槽の水を2つ用意してこう言います。
「この赤道の北側と南側で水槽の水を抜く時の渦の向きが変わります!」
赤道の北側で水槽の水を抜いてみる。
「ほら!反時計回り!」
今度は赤道を1歩またいで南側で水を抜いてみる。
「ほら!!こっちは時計回り!!」
そして観客は、
「おぉ~~~!!(拍手&チップ!)」
となるわけです。
「へぇーー!赤道またぐと変わるんだ!!面白い!!」と言いたいところですが…
残念ながら、実際こんなことはあり得ません。
赤道を数歩またいだ程度で明らかな渦巻きの違いは出ることはないのです。
赤道付近を数メートル移動した程度では変わらないと思っていてください。
しかもこの話は、「実はその場所はまったく赤道ではなかった…。そしてお兄さんが自分で水槽を回して渦を作っていただけだった…。」というオチつきです。
しかし、赤道直下や赤道付近で実験してみたくなる気持ちはわかりますね。
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毎回メンバーの一人がひとつお題を用意して、それに対して物理的に考えメンバーで議論した内容をまとめたエッセイ集です。
あらゆる日常的な現象について、物理的な視点で見るとどう考えるか…といったことが書かれています。
まとめ
今日は台風の渦巻きとコリオリの力についてまとめてみました。
台風の時期やお風呂の栓を抜いたときなど、是非「コリオリの力」を思い出して地球の自転を感じてみてください!ちょっとしたロマンです。